国道444号が佐賀県と長崎県の県境にあるトンネルに差し掛かる手前約1km、鹿島市平谷に源泉温度27.1℃の温泉施設が建つ。大浴場と家族風呂を備える平谷温泉は、山間にひっそり存在する。
雨の平日午前ながら、3台駐車している。自販機でチケットを購入し受付を済ませる。施設の方に導かれ奥へ進むと、右手に大浴場とは別棟の家族風呂が見えてくる。石風呂の札を渡された。出るときはこの札を受付に戻すよう伝えられる。
嬉野温泉街の中心部、公衆浴場シーボルトの湯から徒歩2分ほどの場所に宿はある。木造の宿は年月の経過を感じるものの、スタッフからは丁寧に迎えられた。
フロントから長い廊下を奥まった場所まで進むと露天風呂のエリアに着く。自動扉が開くと浴舎だ。手前の扉が男湯、そして女湯、貸切湯と並ぶ。脱衣所には洗面台が3つ、脱衣籠がゆったりと並ぶ。アメニティに不足はない。
延びた庇の先に岩で組まれた露天の浴槽、左方庇の下には洗い場が3か所配置されている。浴槽を満たすのは透明の湯だ。源泉温度88℃ながら、浴槽内は適温に調整されている。
鼻孔には塩素臭が届く。湯が肌に残すのは至って素直な印象だ。湯口からは勢いをつけて湯が注がれる。浴槽から溢れることなく湯面は維持される。
浴槽の周囲は植栽され、その先は塀などで囲まれている。洗い場にはダイヤル式の混合栓が用意されている。供給されるのは白湯のようだ。
幸いにひとりっきり、穏やかな時間だけが過ぎていく。